AIと仕事
ライセンスを買って研修をすると、それでゴールしたように感じます。でも、本当はそこがスタートです。この記事では、そこから実際の成果につなげるために私が考えたシンプルなフレームワークを紹介します。ステージごとに私ならやることと、最初に使える1ページのプランも載せています。
AIの取り組みの多くは、同じように終わります。ライセンスを買い、研修を行い、報告書には「完了」と書かれます。
でも、それはプロジェクトが終わっただけで、成果が出たわけではありません。MIT NANDAの2025年の調査では、売上の急成長につながったAIのパイロットは約5%でした。1 AIベンダーのWRITERによる2026年の調査では、生成AIで大きなROIを得ている組織は29%にとどまり、個人レベルの成果が事業の価値につながっていないことも分かりました。2
問題はツールではないと思っています。たいてい足りないのは、ツールの周りにあるすべてです。何を増やしたいのかを決めること、変えるべき仕事を見つけること、そのための準備を整えること、そして実際に何かが変わったかを確かめること。
AMPLEは、私が改善を続けているフレームワークです。自分や周りの人がAIにどう取り組んでいるか、そしてどこでつまずいているかを見てきて考えました。1人でも、チームでも、組織全体でも、成果につながる形でAIを取り入れるための実践的な方法の1つで、仕事と事業の両方を良くすることを目指しています。5つのステージがあり、最後のステージが最初に戻るので、回り続けます。
対象は、すでにAIを使い始めていて、導入するだけでなく成果を出したいと考えているすべての人です。自分の仕事でも、チームでも、組織全体でも使えます。
ここからは、ステージごとに、私ならやることと、終わったときに手元にあるべきものを紹介します。
まずゴールから決めます。何を増やしたくて、何を減らしたいのか。「タスクXを自動化する」ではなく、「マーケティングにもっと時間を使う」「提案書をもっと早く出す」「これまでできなかった仕事をする」といった形です。
次に、会社全体ではなく、自分のワークフローか、チームのワークフローを1つ選びます。最初はタスク1つでも構いません。業務マニュアル上の流れではなく、今の仕事が実際にどう進んでいるかを書き出します。チームのワークフローなら、実際に仕事をしている人と一緒に書き出します。
担当自分の仕事なら自分。チームなら、チームリーダーと実際に仕事をしている人。終わったとき1〜3つのゴールと、手間がどこに使われているかが分かるタスク一覧。
多くの人がつまずくのがこのステップです。AIに実際に何をさせるべきか。だからこそ、ここは時間をかける価値があります。
ツールからではなく、Auditで決めたゴールから考えます。どのタスクがそのゴールの妨げになっているのか、と問いかけます。
自分の仕事では、聞き方を変えます。このタスクをなくして、もっと大事なことに集中するにはどうすればいいか。答えがAIのこともあれば、そもそもそのタスクが要らないこともあります。
タスク単位で考えます。職種やチーム全体では、単位が大きすぎます。「デザインは人がやるべきだ」と言う人もいるでしょう。方向としては正しいと思います。でも、デザインの中にも、参考資料を集める、バリエーションを作るなど、喜んで任せたいタスクがあります。
タスクごとに、次の4つのどれかを答えます。
最初の答えは、飛ばされがちです。依頼が「AIを使おう」だからです。でも、いちばん手軽に得られる成果になることが多いのです。
でも、AIは仕事を減らすためだけのものではありません。もっと大きな変化は、これまでできなかったことができるようになることです。動くアプリを作れるプロダクトマネージャー。きちんと伝わるスライドを作り、データでストーリーを語り、それを見せる分かりやすい画面をデザインできる人。だから、もう1つ答えがあります。
これも、0か100かではありません。私のタスク全体で見ると、だいたい10%を人がやり、30%をAIと一緒にやり、60%をAIに任せています。これはあくまで出発点の目安で、目標ではありません。何かを任せる前には、3つのことを考えます。なぜAIがやるべきなのか。任せるリスクに見合うのか。人が主導権を持ち続けるべきか。
次に、空いた時間をどこに使うかを決めます。自動化すれば、もっと価値の高い仕事に時間を使える、とよく言われます。でも実際によく見るのは、同じタスクをもっとたくさんこなしているだけの状態です。人がやる、AIと一緒にやる、AIに任せるの割合は、タスクごとに変わります。大事なのは、戻ってきた時間をゴールに向けることです。たとえば、AIエージェントを活用したプロダクトのデザイン・開発プロジェクトなら、戦略やデザインの検討、アイデア出しにずっと多くの時間を使えるようになります。
タスクを見つけるには、次の質問が役立ちます。
「もっとやりたいこと」からは、人がやるものと、空いた時間を向ける先が分かります。最後の2つからは、加えるもの。残りからは、やめるもの、AIと一緒にやるもの、AIに任せるものが分かります。
担当自分で決める。チームなら、チームリーダーがチームと一緒に決める。終わったとき変えることの短いリスト。それぞれに、答え、成果、出発点の数字、担当者が決まっている状態。
1行に1タスク。1つのワークフローについて、1人でもチームでも記入できます。記入したら、最初に取り組む1〜3行と、加えるものを1つ選びます。入力した内容はこのページの外に送られず、保存もされません。ページを離れる前にコピーしてください。
| タスク | 頻度と所要時間 | 何のための作業? | やめる、人がやる、AIと一緒にやる、AIに任せる? | 理由とリスクは? | これが片づいたら、集中できること… |
|---|---|---|---|---|---|
| まだできないこと | 結果が変わるところ | 最初に作る小さなバージョン |
|---|---|---|
スマホでは、表を横にスワイプするとすべての列が見られます。
次に、選んだタスクに何が必要かを洗い出し、それだけを整えます。全員を一度に、ではありません。私は5つの質問をします。
ここは大切です。でも、これはスタートにすぎません。環境が整っても、それが大事な仕事に使われるとは限りません。
担当自分。または、ツールとデータを管理している人と、AIのアウトプットを確認する人。終わったとき選んだタスクのためのツール、連携、コンテキスト、ルール、チェック。
ここで、変化が価値に変わります。空いた時間と新しくできるようになったことを、ゴールに注ぎ込むのです。ここはまた、実際にうまくいくのを私が見てきた部分でもあり、始まりは研修です。
私は200人を対象にAIワークショップを行いました。1回あたり約3時間で、ワークシートを使って自分のペースで進めることもできました。全員がAIを使ってアプリを作りました。
本当のポイントは、アプリではありませんでした。ワークショップでは、やり方を説明するだけでなく、実際にどう活用するかを考え始めるためのユースケースや事例を紹介し、マインドセットや考え方も扱いました。それが、「アプリを作れる」から「自分の仕事の中に、作る価値のあるアイデアがある」へと、人を動かしたのです。
全員が、何らかの形で完成したアプリを手にしました。そして、そこから想定以上に広がりました。学んだことを生かして社内の業務ツールを作った人もいれば、クライアントへの提案のためにプロトタイプを作り始めた人もいました。
特に印象に残っているのは、コードを書いたことのなかったプロダクトマネージャーです。彼は提案の段階で、プロダクトのビジョンを見せるために、動くプロトタイプを作りました。以前なら考えられなかったことです。
提案書は、アイデアを説明するものでした。今は、アイデアが動くところを見せられます。
英国政府による2026年のAIスキルアップの事例のレビューも、同じ方向を示しています。研修は、実際のタスクや成果と密接に結びついているときに効果がある、ということです。3
担当自分で毎週振り返る。チームなら、チームリーダーが毎週の定例を回す。終わったとき空いた時間と新しいスキルが毎週ゴールに注がれている状態と、そこから生まれた価値の記録。
次にやるなら変えたいのが、ここです。私は成果を追っていませんでした。マネージャーが追っていたのは、ワークショップを受けてアプリを作った人数です。それも知る価値はありますが、数えているのは参加であって、価値ではありません。プロトタイプを含んだ提案がいくつあったか私が言えないのも、そのためです。
私なら、Auditで決めたゴールから始めて、次を追います。
削減時間は、いちばん出しやすい数字ですが、いちばん弱い数字でもあります。浮いた時間は、何かに変わって初めて意味を持ちます。
担当自分。チームなら、チームリーダーと数字を管理している人。終わったときゴールに照らして何が変わったかの根拠と、次の一周のリスト。
5つのステージを1ページに。ここで記入して、自分のドキュメントにコピーしてください。保存はされないので、ページを離れる前にコピーしてください。
1人でも、チームでも、組織全体でも、自分で進められます。